No.212 2019年7月5日放送 (愛媛) 本の轍 主宰 越智政尚さん
今回は、「本の轍」主宰の越智政尚さんにお越しいただきました。
「本の轍」は、「本と雑貨をハシゴして、ついでにコーヒーも飲める本屋さん」。
愛媛県松山市出身の越智さんが、5年ほど前に職場の異動で県外から松山へ戻ることになったことと、
奥様が病気を患われたこと、さらには、学生時代に通っていた街中の古本屋さんが
閉店したこともきっかけとなり、お店をオープンさせました。
「人生何が起こるか分からないと思って、もともと思い描いていた、『2人の居場所』を早めに作りました。
『文学のまち、松山』といいながら、本に親しむ空間が減ってきた感じがしたので、
僕が関わっていけたら面白いかなと思ったんですよね。」と、越智さん。
店名「本の轍」の由来は、ご夫妻でお好きなボブ・ディランのアルバム
「Blood on the Tracks〜血の轍〜」(1975)から来ているそうです。
「血だまりはちょっと怖いですが(笑)、本だまりだったらどうだろう?と思ったんです。
『たくさんの本の上に自分が座っている』という、自分の読書遍歴をイメージして思いつきました。
『轍』は、1冊の本の道程に思いを馳せてみました。読み終わった本を、
人にあげたり、古書店に売ったりすると、次に読んだ人が、また次の人に本を渡していく。
そういう流れが、轍のように見えるんじゃないかなって思ってつけました。」
お店のロゴマークが、まさに店名を表しているな、と感じます。
ちなみにこのマークは、スピッツのCDジャケットなどを手掛けた、
イラストレーターの福田利之さんに考案していただいたそうです。
お店を開店させるにあたって、越智さんの好きなお店を見たり、ニューヨークの本屋さんを回ったりして、参考にしたそうです。
「ニューヨークには、個人経営の本屋さんがたくさんあるんです。
歴史のある書店もあれば、若い方が経営しているお洒落な今風のお店もあって、地域に根ざしたお店ができていました。
大資本のお店じゃなくて、地元の商店街の肉屋、魚屋、本屋。買い物はローカルでしようよっていう、いい空気が流れていました。」
「本の轍」も、街に溶け込んでいます。
店内は、新刊、古書、レトロな絵本、雑誌。それから、雑貨、美味しそうなジャム、
コーヒーの香りも漂ってきて、「ずっとここにいたいなあ」と思う心地よさ。
ニューヨークの街角の本屋さんの雰囲気も、もしかしたら感じられるかもしれません。
「お店のコンセプトは、本と、他の物とのかけ合わせです。なかなか本だけでやっていくのは難しいので、
本と雑貨、本とコーヒー、本とイベント。掛け算のように組み合わせています。」
本を選ぶ基準は「本離れ、読書離れが進んでいるうえ電子書籍も多いですので、そうではなくて、
紙の本のいいところに触れていただきたい、ということで、手に取りやすい本。
表紙がすごく可愛いとか、ぐっと惹かれるとか。アートブック、絵本、写真集、エッセイ、短編集。
気軽に手に取ってちょっと読んで楽しめる、という形で、本に触れていただく人を増やしたくてチョイスしています。」とのこと。
懐かしい絵本、ロシア語の絵本も。雑貨は、ハンドメイド作家でもある奥様の作品
「編み物雑貨」もあります。店内は、「お洒落なおもちゃ箱」のようでした。
本の一番の魅力は、
「子どもから大人まで楽しむことができるってことですかね。子どもの頃読んだ本を、
大人になって見返すと、違う印象を持ったり、見直すことができたり。
また、ページをめくると視覚だけじゃなくて、紙の音、手触り、インクの香り…
五感を使って、読書っていう体験ができる。そこも大きな魅力でしょうね。」と楽しそうにお話しされていた越智さん。
スタジオに、本を持ってきてくださいました。
ニューヨークの本屋さんがたくさん載っている本。登山家ガストン・レビュファの写真集。
越智さんの今一番のお薦めの本も、紹介していただきました。
「本の轍」で出しているコーヒー豆を焙煎してくださっている
徳島の「アアルトコーヒー」のオーナー・庄野雄治さんが執筆された短編集
「たとえ、ずっと、平行だとしても」。随所にこだわりが見られる素敵な本です。
越智さんの夢は
「妻とのずっといい居場所であり続けたいです。そして、当店に集うお客さんから、
何か新しいものが生まれたらいいなあ、そういう場所にしていけたらいいなあと思います。」
そんな越智さんのキーワードは「旅」。
「本っていうのは、過去にもいけるし、未来にもいけるし、近所にも行けるし遠くにも行けるし。
1冊の本を開いて読むことで色んな所にいけるんです。『日常を旅に変える』って僕は言ってるんですが。
本はどこでも読めますから、開いたところでどこにでもいけるよっていう思いがあります。ぜひ、みなさんも開いて旅の世界へ。」
1冊1冊のストーリーや、説明をお話しくださる越智さんは、少年のように目をキラキラ輝かせていらっしゃいました。
越智さんのお話しを聴くだけで、とてもあたたかい、豊かな気持ちになれて、今すぐに、本を開きたくなりました。
みなさんも、ぜひ一度、越智さんと奥様に会いにお出かけください。
「本の轍」
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- 2019.07.05 Friday
- FM愛媛
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